2026年の夏、AIモデルの勢力図がまた動きました。7月にClaude Opus 5が出て、中国オープン勢のKimi K3やGLM-5.2、DeepSeek V4も一気にフロンティア級へ。さらに8月3日にはAlibabaのQwen 3.8 Maxが登場と、正直、追いかけるだけで大変ですよね。
この記事では、三大ラボのクローズド勢——Anthropic(Claude)/OpenAI(GPT)/Google(Gemini)——と、フロンティア級に迫るオープン勢をまとめて比較します。
そこでこの記事では、2026年8月時点のフロンティアモデルと「フロンティア級のオープンモデル」を、性能とAPI料金の両面で表にまとめて比較します。結論を先に言うと——同じ性能帯の中では、オープンがクローズドの数分の一。そして”ミドル性能を激安で”回すという選択肢が現実になった。ここが今いちばん面白いところです。
先に、大事な注意を3つ
数字の記事なので、鵜呑みにされると困る点を正直に置いておきます。ここmogucaは”盛らない”のがポリシーなので。
- 数字は動きます。 性能スコアはArtificial Analysis社の「Intelligence Index v4.1」、料金は複数の料金比較サイトを突き合わせた2026年8月5日時点の値です。モデルもランキングも毎週のように変わるので、実際に使う前に各社公式で必ず確認してください。
- スコアは”効かせ方”で変わります。 最近のモデルは推論の強さ(effort)で同じモデルでもスコアが数ポイント動きます。特にClaude Sonnet 5のような可変推論モデルは幅があるので、あくまで目安として見てください。
- ベンダー公称と第三者検証は分けて読む。 Qwen 3.8 Maxは新しすぎて独立系のベンチ結果がまだ出ていません。公称値は「メーカーの言い分」として扱います。Kimi K3・Qwen 3.8 Maxは重み公開を予定していますが、この時点ではまだ未公開です。
ティア別・性能×API料金 まとめ表(2026年8月5日時点)
「一番賢いのはどれ?」だけだと実務では役に立たないので、性能帯(ティア)ごとに分けて並べました。スコアはArtificial Analysis Intelligence Index、料金は100万トークンあたりの入力/出力(ドル建て)です。緑がオープン系、黄色がオープンウェイト(現時点で重み未公開)、紫がQwen 3.8 Maxです。
| モデル | スコア | 入力$/1M | 出力$/1M | 種別 |
|---|---|---|---|---|
| ■ ハイエンド(最高性能帯・Index 約56〜61) | ||||
| Claude Opus 5 | 61 | $5 | $25 | クローズド |
| Claude Fable 5 | 60 | $10 | $50 ※ | クローズド |
| GPT-5.6 Sol | 59 | $5 | $30 | クローズド |
| Kimi K3 | 57 | $3 | $15 | オープンウェイト(未公開) |
| Claude Opus 4.8 | 56 | $5 | $25 | クローズド |
| Qwen 3.8 Max | 公称ハイエンド級 ★ | $2 | $6 | オープン系(重み近日公開予定) |
| Gemini 3.1 Pro | 指標刷新中 ▲ | $2 | $12 | クローズド |
| ■ ミドル(実務主力・バランス帯・Index 約51〜55) | ||||
| Grok 4.5 | 54 | $2 | $6 | クローズド |
| Claude Sonnet 5 | 約53〜57 ◆ | $2 | $10 ◆ | クローズド |
| GLM-5.2 | 51 | $1.40 | $4.40 | オープン(MIT・ホスト可) |
| ■ エントリー/激安(性能はミドル前後・価格が最安帯) | ||||
| GPT-5.6 Luna | 51 | $0.20 | $1.20 | クローズド |
| DeepSeek V4 Flash | 50 | $0.14 | $0.28 | オープン |
★ Qwen 3.8 Maxは2026年8月3日リリースで、Artificial Analysisなど第三者の総合スコアがまだ付いていません。Alibaba公称では「Fable 5に次ぐ性能」ですが、これはメーカー公式情報であり独立検証の結果ではありません。
◆ Sonnet 5のスコアは推論の強さ(effort)で53〜57程度に変動します。料金は2026年8月31日まで$2/$10、9月1日以降は$3/$15の予定。
▲ Gemini 3.1 Pro(Google)は料金は確定($2/$12。20万トークン超の長文は$4/$18に上がります)ですが、スコアは指標のバージョンで割れています。登場時は当時の指標で1位(57相当)だった一方、現行のIntelligence Index v4.1では3.1 Pro Previewが46前後。加えて7月21日にGemini 3.6 Flash($1.50/$7.50・v4.1で50前後)が出るなどラインナップ刷新の途中です。三大ラボの一角として表には載せますが、順位は流動的なのでGoogle公式で最新をご確認ください。
※ Fable 5の出力単価は情報源によってばらつきがあります。公式の料金ページで確認してください。
この表から読み取れること
3つのポイントに分けます。
① 頂点はまだクローズド、でも差はごくわずか。 ハイエンド帯を見ると、上位から最下段でも56。少し前まで「オープンはクローズドの1〜2年遅れ」が常識でしたが、その差はもう数ポイントです。Kimi K3(57)がオープンウェイト系として過去最高スコアで食い込んでいるのが象徴的。なお三大ラボのうちGoogle(Gemini)は、ちょうどこの夏がラインナップ刷新の真っ最中で、指標上のスコアが版によって割れています(詳しくは表の▲注記へ)。Anthropic・OpenAIが先に次世代を固めた、という時期的な差も見えてきます。
補足:この指標ではOpus 5(61)がFable 5(60)をわずかに上回っていますが、差は1ポイントで誤差の範囲です。AnthropicはFable 5を最上位モデル、Opus 5を「Fable 5に迫る性能を約半額で」という位置づけにしています。ベンチマークによって順位は前後するので、この2つは実質同格(そのうえOpus 5は約半額)と読んでください。「Opus 5のほうがFable 5より賢い」という意味ではありません。
② 同じハイエンド帯なら、オープンのほうが断然安い。 ここが本題です。ハイエンドの出力単価を並べると、クローズドのOpus 5が$25、Fable 5が$50なのに対し、オープン系のKimi K3は$15、Qwen 3.8 Max(公称)はわずか$6。同じ”最高性能帯”の中で、数分の一の価格で回せる時代になりました。
③ そして「ミドル性能を激安で」という新しい選択肢。 ここで最初の話に戻ります。よく「Opus 5とDeepSeek V4 Flashは何十倍も価格差が!」と言われますが、これはティアをまたいだ比較なので少しフェアではありません。DeepSeek V4 Flash(50)やGPT-5.6 Luna(51)は、性能的にはハイエンドではなくミドル前後の”実務で十分使える”帯。それを出力$0.28や$1.20という、ハイエンドの数十分の一で回せる——これが本当のインパクトです。「Opusの代わり」ではなく「大量処理を激安で捌く主力」として見ると、破壊力が分かります。
用途別・どれを選ぶ?
ティアの考え方が分かると、選び方はシンプルになります。
- 最高性能が要る難所(複雑な設計、難解なデバッグ、品質が売上に直結する成果物)→ ハイエンドのOpus 5 / Fable 5。値段なりの仕事はします。コスト重視ならKimi K3やQwen 3.8 Max(公称性能が本物なら)も候補。
- 実務のメイン作業(コーディング補助、そこそこ賢い応答)→ ミドルのSonnet 5 / Grok 4.5 / GLM-5.2。バランスが良い帯です。
- 大量に回す定型処理(要約・分類・整形・一次リサーチ)→ エントリー/激安のDeepSeek V4 Flash / GPT-5.6 Luna。”薄く広く”回す用途では圧勝。
- データを外に出したくない/自前で回したい → GLM-5.2(MITライセンスで実際にホストできる)やDeepSeek V4。「クラウドに出さない」という価値そのものが選定理由になります。
……ただ、ここまでの表には大きな落とし穴があります。単価が安いモデルが、実際の請求でも安いとは限らないんです。これは面白いので、実際に測ったデータで見てみましょう。
【おまけ】単価が安い=実コストが安い、ではない(実測してみた)
実コストは「単価 × 使うトークン量 × 速度」で決まります。とくに思考(thinking)トークンを大量に吐くモデルは、1回の処理で使うトークンが膨らんで、単価の安さを打ち消してしまうことがある。言葉だけだとピンとこないので、私が実際に測ってみました。
同じTypeScriptの実装タスクを、OpenRouter経由で各モデルに同一プロンプトで投げて、1タスクあたりの実コストを比べたものです(2026年7月下旬時点の実測。当時の各社モデルを使用)。
| モデル | 1タスクあたり実コスト |
|---|---|
| GLM-5.2 | $0.007 |
| Qwen 3.7 Max | $0.015 |
| Sonnet 5 | $0.023 |
| GPT-5.6 Sol | $0.029 |
| Kimi K3 | $0.063 |
| Fable 5 | $0.097 |
注目はKimi K3です。単価は入力$3・出力$15で、GPT-5.6 Sol($5・$30)より安いはず。なのに1タスクの実コストは$0.063と、GPT-5.6 Sol($0.029)の倍以上かかりました。理由は、Kimi K3が思考トークンをたくさん吐くから。単価表の順位が、実コストではひっくり返ったわけです。「中国オープン勢=とにかく安い」と思い込むと、ここで足をすくわれます。
逆にGLM-5.2は$0.007で、Fable 5($0.097)の約13分の1。こちらは単価どおり、安さが本物でした。同じ”中国オープン勢”でも、実コストはこれだけ差が出ます。
もうひとつ、速度も無視できません。米国勢がだいたい20秒前後で返すのに対し、中国勢は1〜2分。thinkingが長いぶん、体感の待ち時間はもっと長く感じます。ちなみに小問3問のスポットチェックでは、中国勢3モデルとも全問クリアでした。品質が並ぶなら、あとは「速さにいくら払うか」がモデル選びの本質になってきます。
というわけで、この記事の単価表はあくまで出発点です。本気で使うなら、自分のタスクで一度、実コスト(単価 × トークン量 × 速度)を測ってみてください。数字が全然違って見えるはずです。
まとめ
2026年8月時点の結論はシンプルです。最高性能ならクローズド(最上位のFable 5、半額で迫るOpus 5)。同じハイエンド帯でもオープン(Kimi K3・Qwen 3.8 Max公称)なら数分の一。そして”ミドル性能を激安で”回すならDeepSeek V4 FlashやGPT-5.6 Luna。ティアで分けて考えると、選択肢がぐっと整理されます。ただし前半で見たとおり、単価と実コストは別物——最後は自分のタスクで測るのが確実です。
大事なのは「一番賢いモデル」を探すことより、タスクごとにティアを選ぶことだと思います。難所だけハイエンド、実務はミドル、量産はエントリー。この使い分けが、いまはいちばん割がいい。
最後にもう一度だけ。この記事の数字は2026年8月5日時点のものです。この分野は本当に動きが速いので、実際に採用する前に、性能はArtificial Analysis、料金は各社の公式ページで最新を確認してくださいね。数字が変わっていたら、それ自体がまた面白いニュースです。

